エクセルシア盛岡中央高校デジタルブック
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 新渡戸稲造終焉の地、カナダ・ビクトリア市へは、これまで延べ2,500名以上のCHUO生が修学旅行などで訪れている。盛岡市との国際姉妹都市締結も30年以上が経過し、様々な交流活動が行われてきた。同地、マウントダクラス高校とCHUOの姉妹校教育交流の歴史は10年を迎える。この間、盛岡市にある新渡戸基金の顕彰活動は着実に進展し、数多の研究成果を国内外に発信している。本書もその果実の一つ。読みやすく親しみやすい記述で、日本が世界に誇る国際人・新渡戸稲造博士のスピリットと人間像を、幼年期から晩年まで余すところなく伝えている。 すべての日本人へ 新渡戸稲造の至言~Nitobe Inazou,s wise saying~著者・藤井 茂 Shigeru Fujii 長本裕子 Yuko Nagamoto発行所:一般財団法人 新渡戸基金定価:本体2,000円+税   平成28年5月28日初版すべての日本人へ 新渡戸稲造の至言- Nitobe Inazou's wise saying - 本書は1頁ごとに日付けがあります。1月1日から12月31日まで365日。1日1頁。毎日、毎年、心して読んでもらいたい、という二人の著者の願いが込められています。その新渡戸博士の至言を二つ紹介します。「人のために尽くす人生…世に生まれ出でたる大々的目的は、人のために尽くすにある。自己の利益のためではない。我が生れきた時より死に去るまで、我が周囲の人が少しなりとも良くなれば、それで生れた甲斐ありというもの」         (4月17日) 100年以上前、稲造20歳のころのこの言葉は、近年「自利利他」という良く似たビジネス用語になって甦っているようですが、本来は、最澄伝行大師の唱えた仏教用語とされています。しかし稲造のこの言葉は、犠牲的精神の響きがあって、理想を追求する博愛主義者らしい青年時代のりりしい表情が見えてくるようです。「感謝の力…ありがたいと思う感(観)念は、心の外にある品物ではない。苦しいことも、ありがたいと念ずれば、ただちにありがたくなる。いやなことも、うるさいことも、生も死も。感謝の念は鉄も鉛も黄金に化する力がある。」           (8月7日) こちらは東京女子大学長時代ですから、稲造50代の至言です。最後の「鉄も鉛も黄金に化する力」を、感謝の念に発見したところが稲造独特の文章表現と思われます。これについての解説を著者は次のように記しています。「新渡戸は『自己』という観念の中には、妻子、父母をはじめとして、友人、同郷人、同国人、世界の人類をも含んでいると考え、人は自分一人では生きていけるものでないで、常に周囲への感謝の心を大切にしていました(後略)」。 このように編集上の工夫がなされている上、二人の著者が具体例を挙げて至言の解説をしているので、読者は一層、本書の世界に浸れるように構成されています。本校図書室で閲覧できます。         (編集部)新渡戸稲造の世界稲造と生きるブックレビューBook ReviewEXCELSIOR vol.188

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