エクセルシア盛岡中央高校デジタルブック
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 我が国のヘルスツーリズムの市場規模は約3兆円。盛んになった背景には、五大疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、精神疾患)があります。ヘルスツーリズムは具体的には、ウォーキング、温泉療法や森林浴、自然体験、地産地消の郷土料理等による健康増進と長寿志向があり、これらを推進することによって観光活動の幅を広げ、高齢化社会の進展に伴う国民医療費の増大を抑制するのが大きな目的です。 本書は、第1章 ヘルスツーリズムとは/第2章 世界のヘルスツーリズム/第3章 日本におけるヘルスツーリズム/第4章 これからのヘルスツーリズム、から成っています。国内外の様々な学術書や報告書による引用がありますが、論述のベースになっているのは西村教授の長年にわたる小中学生から高校生との、大自然を舞台にしたフィールドワークの指導体験。とくに北海道の大地、長野県の黒姫高原、またニュージーランドでの合宿教育研修への参画等が、バイタリティーあふれる著者の確かな知識・技術・経験および豊富な人脈を形成しているようです。加えて、ヨーロッパ諸国における「クナイプ自然療法」の実地研究も注目すべき論考と言えるでしょう。 一方、神戸在住の西村教授は、地元の人たちとの地域起こし活動にも熱心に取り組まれています。「KOBE森林植物園ウェルネスウォーキング」が一例です。六甲山を健康保養地にするため2013年に起ち上げた研究会が、課題として世界各国のヘルスツーリズムの歴史や実情を勉強し、また国内の先進地に学び、情報収集をして、講演会やケーススタディを積み重ねてきました。そのプログラムの一つとして、科学的、医学的な根拠に基づいたウォーキングのあり方を実践的に研究しているのです。そこには、高齢化が進む地方において課題となっている地域の歴史文化の継承、地域住民の暮らしぶりや生活の知恵の伝承等を、じかに聞いて伝えることが必要になっていているのではないか、という西村教授の郷土愛と問題意識があります。そして、そのような魅力を情報発信することもウェルネスウォーキングの使命ではないかと提言しています。まさに「いま注目を集めるヘルスツーリズムが、手にとるようにわかる1冊」です。 尚、本書は本校図書室蔵書の1冊に加えられ、閲覧しております。 (編集部) 健康長寿を目指して「お散歩でこの国を元気にする」との副題がある本書は、西村教授のこれまでの民間教育活動の集大成であり、深い思索に基づいた新たな飛躍のための「行動指針の書」。健康増進がビジネスを創造し、地域活性化にもつながる、という強い信念。そうした多彩な活動の一環でもある「食育講演会」。本校では特色づくり教育事業の一つとして、著者である西村教授にここ数年、毎年大学受験シーズン前にご講演をお願いしています。平成28年11月28日に盛岡中央高校で開かれた講演会のテーマは「食生活と学力向上の関係」。 その中で、学力を伸ばす食事、質の良い食事の提供の必要性と重要性を、一人の父親としての顔をのぞかせながら、歯に衣きせぬ鋭い舌鋒で優しく熱っぽく説かれました。今回も生徒をはじめ教職員、保護者の聴衆に感銘を与え、好評を博しました。『ヘルスツーリズムによる地方創生』著者・西村典芳 Noriyoshi Nishimura発行所:カナリアコミュニケーションズ定価:本体1,300円+税 平成28年3月31日初版ヘルスツーリズムによる地方創生著者の西村典芳先生ブックレビューBook ReviewEXCELSIOR vol.1888

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