エクセルシア盛岡中央高校デジタルブック Vol.20
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岩手から世界へ岩手から世界へ~岩手が生んだ賢治精神の普遍性~From Iwate to the worldー Universality of the Kenji spirit that Iwate gave ー『注文の多い料理店』より 山奥の風景、熊のような大きな白い犬、中国語の語感とはまったく違った擬音やオノマトペの表現、大きな目が印象的な山猫。台北の下町で育った日本語学習歴1年ばかりの大学生は、賢治の描いたどうとと唸る風、ざわざわとうたう草、かさかさと跳ねる木の葉、ごとんごとんと轟く木、そして化けて出てくるヤマネコに想像を膨らませながら、宮沢賢治の書いた日本の東北を言葉を通じて感じると同時に、いつかは作家さんを育んだその土地へ行ってみたいという思いも生じました。 2018年、9月。その長年の思いは、龍澤学館特任部長・川村晴樹先生のご厚意により実現しました。花巻にある賢治記念館を初めて訪れました。胡四王山、標高183メートル。館内の見晴らしの良いデッキからは、晩夏のそよ風に揺れる木々の向こうに、穏やかに息吹をする花巻市がありました。 研究生時代の「石っコ賢さん」は古里の山々を歩き回り、鉱石ハンマーや検土杖を持って土性調査に打ち込んでいたそうです。その仕事に熱心な姿は、館内の展示コーナーで詳しく紹介されています。故郷の自然や風土を、賢治はどれほど感じ、どれほど動かされたのでしょう。  わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。『注文の多い料理店』序より 中国語にも日本語にも通じる好きな言葉があります。 「感動」です。 辞書では、感動とは感情、情動、気力などを含む総括的な用語であるとし、ある物事に深い感銘を受けて強く心を動かされることや、美しいものやすばらしいことに接して強い印象を受け、心を奪われることだと解説します。 また、「感動」という言葉は中国語で下記のように理解されます。 「感」とは、心に従って動くこと。 「感、動人心也」(『説文解字』)、すなわち「人の心を動かすこと」が「感」です。 何かを感じたときには、それと同時に心の何かが動いたことになります。 「感応、反響」とは「response」、「感触、触発感慨」とは「touch」、「感染、感受」とは「be affected by」、「感謝、感激」とは「thank;feel grateful」。 「感」の一文字で、これだけたくさんの表現ができます。人間とは、常に何かを感じて生きていなければならないものでしょう。 * 初めて宮沢賢治という名前を耳にしたのは大学2年目の時でした。日本語の授業で先生が日本を代表する近代作家として宮沢賢治を取り上げたのです。  それはだいぶの山奥でした。  (中略)風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。 Hsueh-Chen Lin      Assistant Professor of Shih Hsin University / Education Advisor for Tatsuzawa Education Group「イーハトーブ」の創出 In order to follow the universality of the Kenji spirit that is also familiar to the world, Ms. Lin Hsueh-Chen (Assistant Professor of Shih Hsin University), Ms. SinLi Chong (Chinese Language Teacher of Taylor's International School), Mr. An Jang Gang (President of Korea-Japan Education and Culture Committee / Former Director of Education of Seoul City) visited Miyazawa Kenji Museum.世界にも通じる賢治精神の普遍性を辿るため、林雪貞氏(世新大学 助理教授)、シン・リー・チョン氏(テイラーズ・インターナショナル・スクール 中国語教員)、安 長江氏(韓日教育文化協議會 会長/韓国・ソウル市元教育長)の3氏が2018年9月に花巻市にある宮沢賢治記念館を訪れました。Emerging of IHATOV - Visit Miyazawa Kenji Museum -~宮沢賢治記念館を訪ねて~林 雪 貞The photo in front of Miyazawa Kenji Museum宮沢賢治記念館の前にてEXCELSIOR vol.2096

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